EDITORS EYE

2021.09.17

MILITARY LEATHER STYLE

エディターの視点でリップヴァンウィンクルの魅力を伝える連載の第4回。前回に続いて今季、力を入れているレザーパンツの新型にフォーカス。ブランドを代表する独特のオーバーロックステッチの秘密にも迫る。
CROPPED BUSH LEATHER
デザイナー大野雅央はトレンドに左右されず独自のスタイルを貫きながらも、毎シーズンいろいろな挑戦をしてファンを飽きさせない。クロップドブッシュレザーは、ミリタリーパンツをルーズテーパードシルエットでアレンジしているのが新鮮だ。レザーパンツをこれだけ太いシルエットで提案するのはブランド初の試み。ウエスト部分はクライミングパンツ風のウェビングベルト、裾にスピンドルコードをあしらうなどギミックを入れて、リップヴァンウィンクルらしく仕上げた。
パーツや工程数の多いデザインを職人が緻密に再現

DETAIL

「前回のレザージャージーはディープオイル仕様でしたが、このブッシュパンツは国産雄牛原皮を使用して、染色後にオイルを入れるなどの最終仕上げをしないライトオイルドレザー。染め上がった革の表情を生かしました」(大野)。前作と同様に実力派ファクトリー「クリエイティブクラン」で、プロダクトコントロールマネージャーの池永太英(いけながたかひで)さんによって作られている。「今回のパンツは両サイドに止水ファスナーのポケットが付くこともあり、革のパーツが20と通常よりかなり多くなっています。その分、作業は複雑になり、神経を使います」(池永)。
中でも手間がかかるのが、リップヴァンウィンクルのアイコニックなオーバーロックステッチ(緩い縫い目が浮き上がる手法)。「本縫いだけでなくオーバーロックステッチが入るので、2台のミシンを使って1日がかりで1本を作るというペースです」(池永)。このためにブランケットなど厚手の生地を縫うミシンをレザー用にカスタムした。縫製工場の中央に置かれているにもかかわらず、稼働するのはリップの生産があるときだけ。「クランには他社製品には使わないリップ専用のミシンが1台あります。だからレザー製品には必ずこのステッチを入れるようにしているんです」(大野)。信頼関係がなければ実現しない贅沢が、リップの独自性を生み出している。
布帛の製品にも使われるこの手法は、ロックミシンを使ってわざと緩く縫製することで、浮き上がって見える荒い縫い目をデザインのアクセントにする。「間には本縫いを入れているので、縫い目が開きすぎたりほつれてしまうような心配はありません。それからリップのレザーパンツは穿き心地をよくするため、スラックスと同様にナチュラルストレッチの裏地をつけています」(池永)。時間がかかる理由がここにもあるが、すべては気持ちよく穿くためのこだわり。池永が難しいオーダーにも快く応えるのは、コミュニケーションを重視する大野の人柄も多いに影響しているようだ。
レザーでもサルエルでストレスなく穿けるのがこのブッシュパンツの魅力。クロップド丈で裾にスピンドルコードを入れたのは、「サルエルの太いパンツはレザーでフルレングスだとだらしなく見えてしまいがち。だからすっきりと短めのレングスで穿けるようにしたかった」という大野の意図による。切り替えのカットソーとスニーカーを合わせれば、スポーティかつモード感のあるコーディネートが簡単に完成。「リップの定番カラーと相性のいいマスタードを差し色にするのが気分です」(大野)。ハイパワージャージのカットソーはユルピタ感が病みつきになる着心地で、こちらもぜひ試してほしいアイテム。
「ゆるすぎないAラインシルエットの”バスターフーディ“は、ブッシュレザーパンツと相性のいいアウターです。太めのレザーパンツを同色ソックスとの一体感あるコーディネートで細く見せています」(大野)。アーミーウールサージの素材感や、モッズコートをあえてパッチポケットにしたデザインが初期の頃を彷彿とさせる。重厚なミリタリースタイルに白スニーカーで抜け感を入れるのも今季の提案だ。久しぶりに提案されたレザーパンツが、リップヴァンウィンクルに新しい風を吹かせている。熱意を持ってもの作りをする大野の姿勢を、何よりも象徴しているアイテムであることも間違いない。

EDITORS PROFILE

Hisami Kotakemori

小竹森久美。1980年代からファッション雑誌でエディター、ライターとして企画、執筆に携わる。渋カジや裏原宿ムーブメントをリアルタイムで取材した経験を活かし、現在はウェブメディアも手がける。ファッションやカルチャー、インタビュー記事などを中心に今も現場主義で仕事に向き合う。

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